レビュー

ジャッキー ファーストレディ 最後の使命(Jackie)

投稿日:2017年3月20日 更新日:

おすすめ度

「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」のポスターキット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

JFK暗殺事件の裏側をファーストレディの視点から描いた伝記映画。ジャクリーン・ケネディを演じたナタリー・ポートマンはアカデミー主演女優賞にノミネートされた。1963年11月22日、テキサス州ダラスで起きたケネディ大統領狙撃事件。目の前で夫を暗殺され、悲しむ間も与えられず副大統領の大統領就任式や葬儀、ホワイトハウスからの退去など次々と対応に追われるジャッキー。夫がすでに「過去の人」となろうとしていることに憤る彼女は、ファーストレディとしての最後の大仕事に取り組んでいく。

 

言いたい放題

アイラ♡ ほとんどもうナタリー・ポートマンの一人芝居といってもいい作品やったね。

キット♤ 彼女が出てない場面はひとつもないもんな。それだけナタリー・ポートマンの出来に大きく依存した作品といえる。そして彼女は会心の演技をしたと思うな。2017年のアカデミー主演女優賞は『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンにもって行かれたけど、ナタリー・ポートマンが獲ってもよかったんちゃうかな。

♡ 『LIFE』誌の記者を招じ入れるところから始まって、彼女の独白に沿ってファーストレディとしてのジャッキー像が紐解かれていく構成といっていいのかな。途中でフラッシュバック的にシーンが入れ替わって時系列が前後するけど、わかりにくい作りではなかったね。

♤ うん。大きく分けて、JFKの暗殺から葬儀への流れ、『LIFE』誌の取材、ジャッキーと神父の会話、彼女が案内役となってホワイトハウスを紹介するTV番組の制作、それとJFKの狙撃そのもの。このあたりが入れ替わりながら出てくるけど、シーンの違いがはっきりしているので混乱することはなかった。

♡ お天気や窓から入る光線の具合に至るまで、個々の場面特性の違いを際立たせてたものね。それぞれジャッキーの心理状態を映し出しているようでもあったわ。演技面でも、JFK暗殺の直後の場面で、ジャッキーがふらふらと動き回って勝手なことをただ喋りまくるところは、錯乱に近いであろう精神状態をよく演じてたと思う。制作陣に『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキー監督が加わっているので、サイコスリラーの要素が見え隠れしたようにも感じたけど・・・。繰り返し使われていた、不安心理をかき立てるような弦楽器の陰鬱な音とかもね。

♤ いろいろ見るべきところはあったと思うで。ポイントのひとつは、JFKの遺体を運ぶ際にジャッキーと義弟のロバートが霊柩車に同乗する場面。ジャッキーは霊柩車の運転手にいきなり、「ジェームズ・ガーフィールドとウィリアム・マッキンリー(2人とも在任中に暗殺された大統領)」を知っているかと尋ねて、運転手は知らないと答える。次に「エイブラハム・リンカーンを知っているか」と尋ねると、運転手は「南北戦争に勝利して、奴隷を解放した大統領です」と答えた。そこで、ジャッキーは即座にリンカーンの葬儀次第を調べさせ、周囲の反対を押し切ってリンカーンと同様のルートでの行進を行おうとする。JFKを国民の意識に刷り込んで忘れられないようにしようという独特の感覚が彼女に備わってたのをうかがわせてる。

♡ そうやね。アメリカという歴史の浅い国にあって、ジャッキーはフランス系の財産家の娘。ヨーロッパのそれとは違うのかもしれないけど、上流という意識はかなり強かったことでしょう。ホワイトハウスの改装にも湯水のごとく浪費したようやし。一連の行動をもって、彼女がファーストレディとしての役割を精一杯果たしたとみるか、虚栄心の強さとみるか、このあたりがジャクリーン・ケネディという人を読み解く鍵なのかと思ったわ。

♤ JFKの印象操作としてもうひとつ彼女がとったのが、『LIFE』誌の取材を受けることやってんな。それもありのままに書かせるのではなく、自分が国民に見せたい内容を記者に指示し、内容を検閲して公開させた。

♡ そうでなければ公開させないという、自分が提供する情報の値打ちを知ってのしたたかさよね。

♤ ここで引用されたのが『キャメロット』。アーサー王伝説で王の居城があったところで、これを題材にしたミュージカルのタイトルでもある。のちにケネディ王朝とも呼ばれるケネディ家やけど、ジョンとロバートの父親のジョセフは、禁酒法時代に密造酒で大儲けしたとかマフィアと付き合っていたといわれるような人物。『LIFE』誌を利用して、ホワイトハウスの住人であった故大統領とその家族をキャメロットの城の王族にたとえ、崇高なイメージで塗り固めてしまおうというジャッキーの目論見通はうまくいったことになる。

♡ ジャッキーにとってケネディとの結婚は、現代アメリカの王侯貴族に求婚されて宮殿入りするようなものやったんやろなと途中何度も感じたわ。JFKの時代をリアルタイムで知っているアメリカ人にとって、ジャッキーってどんな存在やったんやろねぇ。そういう人たちには、たぶん懐かしさとともによく理解できる作品なんやと思う。その点、ジャッキーのことをそれほど知らない日本人にはわかりにくいところが多そう。

♤ さっきのTV番組というのは、CBSテレビで放映されてエミー賞を受賞した“A Tour of the White House with Mrs. John F. Kennedy” って番組やけど、これも当時を知るアメリカ人には周知の存在なんやろな。本作のなかでも、オリジナルとそっくりにナタリー・ポートマンが演じてるけど、衣装やヘアスタイルはもちろん、ジャッキーの歩き方や甘ったるい喋り方などまでよぉ体得してるのがわかる。ナタリー・ポートマンの方が美人やけどな。

♡ 衣装をシャネルの全面協力で再現してるのも話題やね。そういえば、狙撃時に着ていたピンクのシャネルスーツを、ジャッキーは「彼らに見せつけてやる」と言うて着替えなかったという逸話もあるのね。映画にも、ロバート・ケネディやリンドン・ジョンソンが、彼女のちょっとした言動に手を焼く場面が挿入されてて面白い。

♤ 彼らの絡みで興味深いシーンは他にもあるで。JFKの死の直後、副大統領のジョンソンが専用機の中で宣誓して大統領に繰り上がったら、取り巻きが未亡人のジャッキーよりもジョンソンの方を向くところとか、まだ司法長官にすぎなかったロバートが就任したてのジョンソンに頭ごなしに指示するところとか、ジャッキーが引越し準備に追われる傍らで、ジョンソン夫人がすでにカーテンの色合わせを始めてる場面とか。他にも、予備知識があればすんなり理解できたであろう小ネタが随所にあったよな。

♡ 引越し準備といえば、ジャッキーが子どもたちの衣服をダンボールに詰めていた場面で、それまでの陰鬱なBGMが突然長調に変わったのに気がついた? ここって、ジャッキーがようやく前を向いて子どもたちの母としても生きなくちゃということに気づくポイントでもある。といっても、十分に恵まれた生活を維持するためにどうするかということでもあるんやけど・・・(笑)

♤ この映画を人はどう観るかやねんけど、ケネディ家を尊敬あるいは神聖視する人らは、「ジャッキーようやった!」という感想を持つのかもしれない。逆に特に思い入れのない人は、ジャッキーにネガティブな印象を持つかもしれない。どちらにせよ、作り方としてうまいと思うのは、史実を曲げられないという制約の中で、ジャッキーという人物を好む人、嫌う人どちらから見ても納得がいくところの脚本を作って、ナタリー・ポートマンがいずれの人にも受け入れられるような演技をしたということではないやろか。

♡ 『LIFE』のインタビューで語られる内容も、随分含みに富んだものやったという感じよね。よくわからないものも多いけど。

♤ たとえば、「彼(JFK)の友達の中にはがさつな人もいた」という言葉には、ケネディ家とマフィアのつながりを連想するしな。あと、「彼は時々一人荒野に出かけて悪魔の誘惑に身を晒す。でも、いつも私たちのところへ帰ってきてくれる(Sometimes he would walk into the desert alone, just to let himself be tempted by the devil. But he’d always come back to us.」という言葉は、マリリン・モンローとの関係を思わせる。映画の中でジャッキーが息子の誕生日に「Happy birthday」を歌うシーンは、マリリン・モンローがJFKの誕生パーティでこれを歌ったのに引っ掛けてるような感じがしたな。

♡ 日本人には理解面でちょっと不利やった点を差し引いての星3.5ってとこですね。

 

 

 

予告編

スタッフ

監督 パブロ・ラライン
脚本 ノア・オッペンハイム

 

キャスト

ナタリー・ポートマン ジャクリーン(ジャッキー)・ケネディ
ピーター・サースガード ロバート(ボビー)・F・ケネディ
グレタ・ガーウィグ ナンシー・タッカーマン
ビリー・クラダップ ジャーナリスト
ジョン・ハート 神父
リチャード・E・グラント ウィリアム(ビル)・ウォルトン
キャスパー・フィリップソン ジョン(ジャック)・F・ケネディ
ジョン・キャロル・リンチ リンドン・ジョンソン

 

レクタングル336

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