おすすめ度
キット ♤ 3.0 ★★★
アイラ ♡ 3.0 ★★★
史上初の男女平等裁判に挑んだアメリカの女性弁護士ルース・ベイダー・ギンズバーグの半生を描く。ユダヤ人家庭に生まれ、家庭と勉学を両立させながらハーバード法科大学院に入学したルース。夫マーティの協力も得て首席で卒業するが、女性であることを理由にどこの法律事務所も彼女を雇ってはくれない。弁護士となる夢を絶たれコロンビア大学の教授となったルースは、講義で男女平等を説きつつ弁護士となる夢を捨ずにいた。あるとき目に止まった訴訟記録に、彼女は法のもとの男女平等のあり方を変えていくこととなる裁判に自ら弁護士として取り組みはじめる。ルース役に『博士と彼女のセオリー』『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』のフェリシティ・ジョーンズ。夫役に『君の名前で僕を呼んで』のアーミー・ハマー、伝説の弁護士役に『ミザリー』のキャシー・ベイツ。監督は『ディープ・インパクト』のミミ・レダー。
言いたい放題
キット♤ カテゴリーとしては社会派ドラマであり法廷もの。法のもとの男女平等を勝ち取るため奮闘した実在の弁護士ルース・ギンズバーグの半生の物語。
アイラ♡ もちろん良作。女性であるがゆえに若くして夢絶たれ、男女平等への道を一歩ずつ切り開いてきた主人公へのリスペクトに満ちているし、原題の「On the Basis of Sex(性別に基づいて)」は彼女が闘ってきたテーマそのもの。とはいえ、残念ながら映画作品としてはちょっと凡庸やったかしらね。
♤ こうした作品の多くは、主人公が困難や理不尽な圧力に負けずに頑張り、最後に勝利を勝ち取るという筋書き。観る側も主人公に肩入れするので最後はスカッと気分爽快。クライマックスに法廷での逆転劇をもってくれば盛り上がらないわけがない。勝利の直前にはらはらするようなピンチが大きいほど勝利の感動も大きくなるーーそんな古典的編集手法を忠実に守った作品。実話ベースなので説得力があり、予想通りに話が進む安心感もある一方、物語としてはどうしても厚みに欠けてしまう。
♡ 観ているあいだ、なんだか高校の課外学習で観賞させられて感想文を書かされそうな映画やなぁとずっと思ってた。悪いけど、極めて優等生的やけど中身はいまひとつ盛り上がらん・・・みたいな。
♤ フェミニズムに傾倒し母親に反抗する娘が父親の一言で聞き分けのよい支援者になってしまうとか、裁判の冒頭陳述で石頭ぶりを見せる判事が、その後の主人公の弁論でコロッと肯定的な判決を下すところなど、すんなり行き過ぎてかえって不自然。事実だとしても、ストーリーと脚本の練り込み方しだいでもっと面白くできたんやないかな。
♡ エピソードを詰め込みすぎてるのかもね。なるべく忠実な伝記を作ろうとしすぎて、全体に平板になってしまった印象。とはいえ、複雑なアメリカの司法制度について知らなくても裁判をめぐる場面はちゃんと楽しめるように作ってある。
♤ 米国憲法修正第14条が市民の法の下での平等を定めながら、実際には法律が法律が性による差別を容認してきたことを正さねばならないというテーマにはもちろん共感できる。アメリカの50年代から70年代の世相や街の風景などもよく再現されていて、全体にとても丁寧に作られているだけに、もうちょっとなんとかできなかったのかという思いが残るな。
♡ 娘や女子学生たちの意識を通して、女性差別に対する社会的な考え方が変わりつつある様子もよく描かれてたしね。医大入試で女性が不利益を被っていたことが露見した日本でも、決して他人事ではないお話。ルース・ベイダー・ギンズバーグは性差別と戦う法律家として、アメリカでは知らぬ者がいないほど大衆的な人気を得ている人物だそうで、RBGという愛称も得ているほど。クリントン政権時に連邦裁判所の裁判官に任命され、現在も85歳にして現役。トランプ大統領に批判的であることでも知られる・・・ということで、なぜいまこの伝記映画が作られたのかが見えてくるという寸法でもある。
予告編
スタッフ
監督 | ミミ・レダー |
脚本 | ダニエル・スティープルマン |
キャスト
フェリシティ・ジョーンズ | ルース・ベイダー・ギンズバーグ |
アーミー・ハマー | マーティン・ギンズバーグ |
ジャスティン・セロー | メル・ウルフ |
キャシー・ベイツ | ドロシー・ケニオン |
サム・ウォーターストン | アーウィン・グリスウォルド |
スティーブン・ルート | ブラウン教授 |
ジャック・レイナー | ジム・ボザース |
カイリー・スパイニー | ジェーン・ギンズバーグ |