レビュー

天才作家の妻 40年目の真実(The Wife)

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おすすめ度

キット ♤ 3.5 ★★★☆
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

The Wife

現代文学の巨匠ジョゼフのノーベル文学賞受賞が決まった。ジョゼフと妻のジョーンは、息子とともに授賞式が行われるストックホルムを訪れ、セレモニーの準備に追われていた。だが、ジョセフの作品は長年にわたってジョーンが書いていたもので、才能に恵まれながら作家になることをあきらめたジョーンは、ゴーストライターとなることで夫が世界的作家として成功していくのを支え続けてきたのだった。そのことに疑惑をもつ記者のナサニエルは、真相を確かめるべくジョーンに接近するが・・・。ジョゼフ役に『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズなどのジョナサン・プライス。ナサニエルにはクリスチャン・スレーター。グレン・クローズ第91回アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされ、自身にとって7度目のアカデミー賞候補となった。

 

言いたい放題

キット♤ グレン・クローズという女優は、『ガープの世界』でデビューした後、『白と黒のナイフ』『危険な情事』と順調に出演作を重ねてきていたのに、その後の作品にしばらく恵まれていなかった感じがする。久しぶりに主演映画を観て、思った以上に老けているなと思ったら、今年で71歳。ということは『危険な情事』のときはすでに40歳。もっと若く見えてたけどな。マイケル・ダグラスにストーカーのようにつきまとってた姿が記憶に残るけど、本作の劇場予告を観て、怖いおばちゃん復活かという期待とともに映画館へ。

アイラ♡ せやね。劇場予告の段階でも、どす黒いものを胸に抱いて40年!みたいな彼女の表情はじゅうぶん怖かった。本編はというと、ごくごくシンプルなワンテーマの物語。サブタイトルの「40年目の真実」が何であるかは早々に明かされるので、ミステリアスな話というわけでもない。原題は『The Wife』。まさにグレン・クローズを観るための作品やったね。

♤ ジョーン(グレン・クローズ)は、学生時代に師事していた妻帯者のジョゼフ(ジョナサン・プライス)と結婚したものの、作家として身をたてるつもりだった夫の才能は平凡で、作家としての才に恵まれていたジョーンが夫のゴーストライターとして40年間、数々のヒット作を書いてきた。ここらは、最近観た『メアリーの総て』の主人公メアリーが、女性が本を出しても売れないので夫の名前で初版を出さざるを得なかったという事情にも通じる。

♡ 一方のジョゼフはというと、結婚前は輝いて見えたのに実はダメダメで、妻の才能にコンプレックスを抱きながらも、内助の功によってもたらされた名声をエンジョイしている。ノーベル文学賞受賞の電話がかかってきても、妻に感謝の言葉をかけるでもなく、まるで自分ひとりの手柄みたいに受け止めている。かなりイヤな男だわ。

♤ しかも下半身はゆるゆるで、夫婦で招待されたノーベル賞の授賞式会場でも女性カメラマンと浮気しようとする。夫婦の対比を際立たせようとしてなのか、何ごとにも控えめで慎重なジョーンに比べ、ジョゼフのほうは息子を理解しようとせずに高圧的だったり、健康に不安があるのに食べ物に意地汚なかったり、好感度ゼロというか嫌悪感を感じるように描かれている。このあたり、分かりやすいけど少々過剰演出かなと感じた。

♡ 浮気の手口も十年一日のごとしであほまるだし。でも、老いてもなおセクシーな魅力を放つ男性という設定なので、品の良いジョナサン・プライスの起用は正解。ちなみに彼、『ゲーム・オブ・スローンズ』でラニスター家のサーセイによって総司祭に任命される雀聖下(ハイスパロー)を演じてるのね。清貧で質素な人柄から、打って変わってエロじいさんか・・・。

♤ ジョーン役のグレン・クローズが40年間溜まった鬱積をぶちまけるところは期待通り。若い時のジョーンを演っているアニー・スタークはグレン・クローズの実の娘とか。意外と良かったのが、ゴーストライター疑惑を記事にしようとつきまとう記者役のクリスチャン・スレーター。ジョーンに粘着的な取材を敢行するが、会話の内容や態度をひとつ間違えればジョーンに拒絶されてしまう、その限界を超えぬ微妙なところで話を引き出そうとする演技が光った。

♡ 青春スターだったクリスチャン・スレーターも、一時期からあまり大きな作品には恵まれてこず、ずいぶんお久しぶりやもんね。彼も最後の最後まで食い下がるけど、ラストでは完全にジョーンの一本勝ち。

♤ 結末がどうなるかを考えながら観てたけど、まぁ、ああいう落とし所しかないかな。一応、ジョゼフの幸せな人生は続かなかったということで気は晴れたし・・・。

♡ つくづくこれはグレン・クローズを味わう作品。最初から最後まで彼女の表情は大きくは変わらず、服装もメイクもずっとシンプルなままで、まるで彼女の一人芝居を観ているかのよう。妻のおかげで今の自分があるのに、「妻は書かない」とぬけぬけと言い放った夫への怒りがお腹の底にたまり、増幅し、やがて壮大な夫婦喧嘩を経てひとつの結末を迎える。彼女にとっても苦しい場面。でも40年のあいだ、夫とともに世間を欺いてきた自分は共犯者でもある。主犯者かもしれない。この方法でしか作家になれなかった彼女もまた、長年夫を利用してきたわけで、ここに彼女の諦めもある。ラストでのジョーンのセリフは、ダメ旦那の尊厳を守るためなんかではもちろんないけど、「真相は自分が地獄まで持っていく」という腹のくくり方には、長年連れ添ったジョセフへの愛も感じられて、夫婦というものの不可思議さや面白さを感じるエンディングやったね。

 

予告編

スタッフ

監督 ビョルン・ルンゲ
製作 ロザリー・スウェドリン
ミタ・ルイーズ・フォルデイガー
クローディア・ブリュームフーバー
ジョー・バムフォード
ピアース・テンペスト
原作 メグ・ウォリッツァー
脚本 ジェーン・アンダーソン
撮影 ウルフ・ブラントース
美術 マーク・リーズ
衣装 トリシャ・ビガー
編集 レーナ・ルンゲ
音楽 ジョスリン・プーク

 

キャスト

グレン・クローズ ジョーン・キャッスルマン
ジョナサン・プライス ジョゼフ・キャッスルマン
クリスチャン・スレイター ナサニエル・ボーン
マックス・アイアンズ デビッド・キャッスルマン
ハリー・ロイド 若い頃のジョゼフ・キャッスルマン
アニー・スターク 若い頃のジョーン・キャッスルマン

 

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