レビュー

ラビング 愛という名前のふたり(Loving)

投稿日:2017年3月12日 更新日:

おすすめ度

「ラビング 愛という名前のふたり」のポスターの写真

キット♤ 4.0 ★★★★
アイラ♡ 4.0 ★★★★

1958年のアメリカ。黒人の恋人ミルドレットの妊娠を機に結婚を決意する白人のレンガ職人リチャードは、異人種間結婚を認めるワシントンD.C.の法の下で結婚するが、居住するバージニア州はそれを違法として2人を逮捕する。離婚するか25年間の州外退去かの選択を迫られ、2人は住み慣れた地を離れる。やがては憲法改正にまで至るラビング夫妻の実話をもとに、イギリスの俳優コリン・ファースがプロデュースに加わり劇場映画化が実現。『MUD(マッド)』のジェフ・ニコルズ監督がメガホンを取った。

 

言いたい放題

アイラ♡ 異人種間の結婚を法的に認めていなかったとはいえ、リチャードとミルドレッドの2人は黒人と白人がともに働き、仲良く娯楽にも興じる土地で幼馴染みとして育ち、ごく自然に一緒になったことがまず描かれてるのよね。

キット♤ とはいえ差別はもちろんあって、結婚に対して周囲は決して同調はしない。「同棲で十分やろ」とか「苦労するで」と声をかけるけど、リチャードは反論ひとつしない。一緒にならないという選択肢は彼らの中には毛頭なかったんやな。

♡ 異人種間結婚を禁じる法は先日の『ニュートン・ナイト』でも描かれてたけど、こちらは時代がもっと下って1950年代。法が認めない結婚で生まれた子は非嫡出子となってしまうなど、さまざまな不利益があることがさらりと語られてたね。

♤ ただ、一夫婦の行動がやがて憲法改正にまでつながっていく話と言うてしまうと、これまで多くの映画が描いてきたような公民権運動の活動家とか、体制側の権力を傘にきた圧力とか、自警団やKKKのような暴力組織の横暴なんかを連想するけど、この作品の一番の特徴は静かであるということやね。事実に基づく話とはいえ、むしろ自制的といっていいほど淡々としている。

♡ 特に前段。彼らがバージニアを離れることになるまでの下りは、常に静かに事情を受け止める2人の様子にちょっといらいらするほど。でもミルドレッドがやがて3人の子を産み、強さをたたえた母親となるに伴って変化していく様子は見どころのひとつとちがうかな。

♤ 映画を作る側からすれば、どこかに山場を作って盛り上げるのが常道やろし、観る側もそれをある程度期待している。ことに人権問題や人種問題、社会問題などをテーマにする映画では、弱者が横暴な強者に徹底的に痛めつけられて、見る側がその理不尽さに感情移入した後に大逆転があって歓喜のうちに終わるというのが一番多いパターンと思う。ところが本作にはKKKも出てこないし、逮捕に来る保安官は一応憎まれ役をやっているが可愛らしいもの。多少のいやがらせや不審な車がでてきたりするが、いじめや社会的制裁を加えられるようなことはない。最高裁判所での判決も、盛り上げるにはうってつけの裁判のシーンは一切なく、結果を電話で聞くだけ。

♡ 法廷シーンは映画を面白くするうえで格好の素材やものね。関わってくる若手法律家たちも、小鼻を膨らませて案件に臨む野心的な様子をちらっと見せはするけれど、そういう部分も深くは描き込まない。普通に暮らせたらええんやという2人の変わらぬ思いだけが、強く静かに全編を貫いてるよね。

♤ 「おいしく」できるところを敢えて描かず、説明的なセリフも最小限。回想やフラッシュバックも入れずに時間順に淡々と流れていく作り。それでいて途中で飽きさせずに最後まで引っ張っていくのは、監督で脚本も自ら書いたジェフ・ニコルズがすばらしいと思う。

♡ ルース・ネッガが演じるミルドレッドは、立ち居振る舞いが優美な人で、普段は慎ましやかながら、公民権運動が高まる時代に司法長官に手紙を書いて重要なきっかけを作るなど、行動力があって頭もいい。日本人からみても古風なキャラクターを愛らしく、かつしっかりと演じてたね。

♤ 難しいことを考えるのが不得手な夫に代わって頭を働かせるけど、夫を立てるところでは立てるとか、厳しい環境でも弱音を吐かない強さを持ちながら見かけは普通にしているとか、派手さがないだけに難しい役どころを完璧にこなしていると見たな。世間では、アカデミー主演女優賞はエマ・ストーンではなくルース・ネッガにやるべきだったという声もあるのもうなずける。

♡ 同感。有色人種のノミネートの少なさが取り沙汰されたことへの配慮もあっての候補入りかと勘ぐったこともあったんやけど、もっと前に観てたら私は文句なしに彼女を押してたな。

♤ けど個人的に一番評価したいのは、ジョエル・エドガートン。今まで『スター・ウォーズ』のルークのおじさん役とか、『華麗なるギャツビー』でギャツビーを振った女の結婚相手とか、けっこう観てるはずやのにいまいち印象に残ってなかった。

♡ 出演作はかなり多いほうなんやけどねぇ。

♤ 貧しい育ちで教育もあまり受けておらず、趣味の車のチューニング以外は仕事で黙々とレンガを積むだけ。口下手でセリフが少ない上に、おおっぴらに感情表現しないという難しそうな役。あまり変えない強面の表情をちょこっと動かしたり、セリフをぼそぼそっと喋るだけとかやけど、体全体の感じがいけてる。法律で結婚が禁じられていることを言われた時の「It can’t be right.」とか、弁護士に裁判長に伝えてほしいことがあるかと聞かれて言う「I love my wife」とか、泣かせるやん。

♡ 不器用やけど誠実な男を体で演じてたね。あと『LIFE』誌のカメラマン役のマイケル・シャノンの存在もよかった。エンドロール前に映る実際の写真と、ミルドレッドが後年残したという言葉にはじんときてしまったわ。

 

予告編

 

スタッフ

監督 ジェフ・ニコルズ
脚本 ジェフ・ニコルズ

 

キャスト

ジョエル・エドガートン リチャード・ラビング
ルース・ネッガ ミルドレッド・ラビング
マートン・ソーカス ブルックス保安官
マイケル・シャノン グレイ・ビレット
ニック・クロール バーナード・コーエン
テリー・アブニー ガーネット
アラーノ・ミラー レイモンド
ジョン・バース フィリップ・ハーシュコプ

 

レクタングル336

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