レビュー

The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ  (The Beguiled)

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おすすめ度

The Beguiledキット ♤ 3.0 ★★★ 
アイラ ♡ 3.5 ★★★☆

『バージン・スーサイズ』で監督デビューし、『ロスト・イン・トランスレーション』『マリー・アントワネット』など順調に作品を発表しているソフィア・コッポラの長編監督6作め。クリント・イーストウッド主演作『白い肌の異常な夜』(1971)の原作である『The Beguiled』(トーマス・カリナン)を女性の視点でリメイクし、第70回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した。南北戦争末期のアメリカ南部。世間から隔絶された女子寄宿学園で暮らす7人の女たちの前に、負傷した北軍兵士(コリン・ファレル)が現われる。兵士を介抱するうち彼女たちの欲望と嫉妬が入り乱れ、トラブルへと発展していく。ニコール・キッドマン、エル・ファニング、キルスティン・ダンストらの共演と、コッポラ監督の“女子目線”が見もの。

 

言いたい放題

アイラ♡ 高名な映画監督を父に持ち、セレブリティの世界で培養されたソフィア・コッポラ監督作品。彼女の作品には、ごく限られた人々だけが吸収してきた倦怠感の漂う優れた美意識があって、それゆえ一定のファンを獲得してるのよね。

キット♤ 女優としてはぱっとしなかったけど、『ロスト・イン・トランスレーション』で脚本と監督の才能を証明してみせた。他の作品はあまり観てないけど、本作の特徴は光の使い方かな。室内のシーンがほとんどやけど、鈍い光の当て方がうまくて映像が綺麗。50歳を超えているはずのニコール・キッドマンも綺麗に撮ってもらっている。

♡ あえてヴィンテージのレンズを使ってフィルム撮影を行うことで、この陰影に富んだ質感を捉える効果をあげているのやてね。しかも、やや横幅の狭いヨーロッパ・ビスタサイズを採用することで、独特の窮屈さというか閉塞感を醸し出しているらしい。

♤ 知られた作品やけど、残念ながら観る機会のなかった『白い肌の異常な夜』(1971)のリメイク。前作は『ダーティハリー』や『アルカトラスからの脱出』のドン・シーゲル監督とクリント・イーストウッドのコンビやから、しっかりと男性目線で作られてるのに対して、本作は寄宿舎に暮らす女性たちの視点から描いているのが大きな相違点。

♡ 前作は女たちに次々と手を出していく男の側から、今作は男を奪い合う女たちの側からということやね。

♤ 舞台は南北戦争末期のアメリカ南部。上は40代くらいから下はまだ10代前半くらいの女性ばかり7名が隔絶されたように暮らす寄宿舎に、負傷した北軍兵士(コリン・ファレル)が運び込まれるところから始まる。

♡ 冒頭、静かで深い森に囲まれた寄宿舎と、遠くに轟く砲弾の音というコントラストがうまいね。運び込まれたのは見るからにハンサムで礼儀正しい兵士。7人7様に彼に心を奪われていく様子が実に面白い。彼を招いて夕食会をするとき、戦時というのにきれいに着飾り、互いに目線を交わして牽制しあう彼女たち。かわいいパステルカラーのドレスが素晴らしいのやけど、『マリー・アントワネット』のポップなガーリーカルチャー風味とはまったく違う。でもハイになってる女子の心理がたっぷり描きこまれて、このあとに起きる悲劇の予感とともに、紛うことなきソフィア・コッポラ世界が楽しめる。

♤ 北軍兵士役のコリン・ファレルは、正直あまり印象に残っていない俳優やけどこの配役はまずまずというところ。アイルランド移民で北軍兵士になったという設定なのでアイルランド訛もおかしくない。

♡ それがまた育ちのいい南部女子の心をわしづかみにするわけでしょ。キルステン・ダンストもエル・ファニングも、コッポラ監督の感性を知り尽くしてるので、実に演技がいいよね。

♤ けど物語がいまいちしっくりこないのが残念やな。戦争のために適齢期の男性不在の時期に、女ばかりの寄宿舎という非日常空間に男が一人転がり込んできたことで、普通でないことが起こるという設定はまぁわかる。けど、キリスト教的な博愛の精神で受け入れたはずなのに、最後は正反対のことをしてしまうのがどうもなぁ。

♡ そんなにものごとが綺麗ごとで動くわけないやん。コリン・ファレルは朴訥そうやけど実に色っぽいし、起きるべくして起きた波乱。彼女たちにもあの結末を選ぶべきエゴがある。都合のよいことに戦時やし、なんにもなかったことにするのが一番!

♤ あの兵士の行動も納得いかんぞ。最初に南軍に突き出されてたかもしれんのに、かくまってもらって治療までしてもらって十分ラッキーやったはず・・・。

♡ よりどりみどりに女性がおって、それぞれに秋波を送ってこられたらあんな気にもなるのと違う? 知らんけど(笑) たしかに兵士はあの環境を利用して狡猾な行動に出る。戦争が終われば「負傷したらパラダイスが待っててん!」って吹聴するつもりやったんでしょう。それが一転。女性目線に徹すれば、あ~らお気の毒さま!で終わりやね。

予告編

スタッフ

監督 ソフィア・コッポラ
製作 ユーリー・ヘンリー
ソフィア・コッポラ
製作総指揮 フレッド・ルース
アン・ロス
ロマン・コッポラ
ロバート・オーティス
原作 トーマス・カリナン
脚本 ソフィア・コッポラ
撮影 フィリップ・ル・スール
美術 アン・ロス
衣装 ステイシー・バタット
音楽 フェニックス

キャスト

コリン・ファレル マクバニー伍長
ニコール・キッドマン ミス・マーサ
キルステン・ダンスト エドウィナ
エル・ファニング アリシア
オオーナ・ローレンス エイミー
アンガーリー・ライス ジェーン

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